金森博雄著『巨大地震の科学と防災』は地震学の入門書です。やや専門的ですがこれまでの著者の研究の経緯を順をおってのべているので読み物として読むことができ、一般の人でも理解できる内容になっています(注)。

目 次
一章 地震学を始める
二章 プレートテクトニクス
三章 マグニチュード - 地震の規模を示す
四章 地震波が教えてくれたこと - 多様な地震像
五章 奇妙な地震「津波地震」
六章 アスペリティ
七章 予知・予測への期待と現実

第一章では、著者の金森さんが地震学をはじめた経緯、地震波の波形を解析して地震のメカニズムをしらべる方法などについてのべています。

第二章では、プレートテクトニクスという地球の構造的な運動について解説し、プレートとプレートの境界で巨大地震がおこることを解説しています。金森さんは1968年に、当時所属していた研究室の教授であった竹内均さんとともに、世界に先がけてこの概念を発表しました。

本章を読めば、プレートの境界部に位置する日本列島では、プレートの運動があるかぎりくりかえしくりかえし巨大地震がおこることがよくわかります。

第三章では、地震の規模をあらわすマグニチュードについて解説しています。地震のたびに、マグニチュードと似たような数字がでてきて混乱しそうになるのが震度です。マグニチュードは地震そのものの大きさをあらわすスケールですが、震度とは各地点での揺れの強さを段階的にあらわしたものです。震度は1〜7まであり、5と6には弱と強があります。

したがって1回の地震につき、マグニチュードの値は1つですが、震度は場所によってさまざまになるわけです。マグニチュードと震度とを混同しないようにしなければなりません

ちなみに1995年の兵庫県南部地震のマグニチュードは7.3、2011年の東北地方太平洋沖地震のマグニチュードは9.0、先日のネパール地震のマグニチュードは7.8でした。
 
本書は、地震学の入門書ですが教科書ではなく読みやすい構成になっています。地震学とはどういうものかを知りたい方におすすめします。


▼ 引用文献
金森博雄著『巨大地震の科学と防災』(朝日選書)朝日新聞社、2013年12月25日
巨大地震の科学と防災 (朝日選書)

▼ 注
著者ご自身がつづけてきたオリジナルな研究を基軸にして物語風にのべているのも本書の魅力のひとつです。

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