竹村公太郎著『日本史の謎は「地形」で解ける』をたよりに、奈良・京都・鎌倉・江戸の地形と地理を見ることによってそれらの空間から日本史の大局をとらえなおすことができます。

たとえば、源頼朝は鎌倉にとじこもって幕府をひらき、鎌倉と京都、武士と天皇という「権力と権威の分離」を実行しました。権力も権威も掌握しようとした平家とはちがいます。徳川家康もこの基本原理をつかって国家統治をしました。そしてこの原理は今日の日本国にまでひきつがれていきます。

日本列島では、鎌倉を原点にして武士団が次第に膨張していきました。そして戦国時代に突入、徳川家康によって領土国家・日本国が完成されました。「家康は事実上の最後の征夷大将軍」ということも理解できます。鎌倉からの過程に、空間的に国家が大きくなっていくダイナミクスを見ることができます。

この間、「権力と権威の分離」という基本原理はずっとはたらいていました。このように、現代の日本国にまでつづく「権力と権威の分離」という原理あるいは文化は鎌倉でデザインされたものであり、現代の日本国は鎌倉からはじまった、日本国は鎌倉の路線上にあるととらえなおすことができるのです。明治維新からではなくて。 現代の日本の体制の原点を鎌倉に見てみようというわけです。このようなことを意識しながら鎌倉をあるいてみるととてもおもしろいとおもいます。

空間(地形や地図や写真や絵)をつかって情報処理をすすめることのおもしろさは理屈ではなくて瞬時に大局がとらえれれる点にあります。最近では、Googleマップや Google Earth をつかってこれが簡単にできます。これは従来のいわゆる考えるという行為とはちょっとちがうかもしません。空間をつかって自然にわきあがってくるアイデアを大切にしたいものです。
 
そして大局がとらえられたら、つぎには自分の興味のある部分にはいりこみ、今度はこまかく見ていけばよいのです。



▼ 引用文献
竹村公太郎著『日本史の謎は「地形」で解ける』(Kindle版)、PHP研究所、2013年10月1日
日本史の謎は「地形」で解ける (PHP文庫)

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