ネパールで活動するあるNGOは、ネパール西部山岳地帯のディリチョールに立派な学校校舎を建設しました。すると、そのあたりで暮らしている多くの生徒たちが、ディリチョールの学校に是非かよいたいということになり、周辺部に元々あったいくつもの古い学校はいちじるしく衰退してしまいました。古い学校は校舎が悪く、みすぼらしく感じられるようになったからです。

ディリチョールに鉄筋コンクリートの立派な校舎が建ったために、それまでの古い校舎は相対的に劣化してしまったのです。古い学校は何もしなくても、ほかが高級になると相対的に悪くなってしまいます。これは、たとえば、皆が平等にくらしていた村において、何らかのインパクト(援助)によってごく一部の人がお金持ちになると、その他の村人たちは、何もしなくても相対的に貧しくなってしまうこととよく似ています。

変化は、自他の関係の中で相対的におこってくるものです。貧富の差、格差はこうして生じてしまいます。貧富の差、格差とは相対的なものであって絶対的なものではありません。すべては相対的に決まるのです。

貧しいからといって経済的発展や経済効果をすぐにねらっていく国際援助専門家が実に多いですが、かえって貧富の差を拡大してしまっています。私が所属するNGOネットワークでは、ネパールだけではなくタイでも同様なことがおこっていることを確認しています。

ものごとの格差は相対的にきまることをあらかじめ理解しておくことが必要です。