東京国立博物館・表慶館で開催されている特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」(会期:2015年5月17日まで、注1)は仏教史を俯瞰できるまたとない機会になっていますが、一方で、南アジアの仏教遺跡の分布を地図上でくわしく見ることもできます

会場のショップで売っていた特別展のカタログ(図録、注2)の164〜166ページには南アジア地域の地図がでていました(図1〜3)。これが役立ちます。わたしは各作品(展示物)が出土した場所を地図上でたしかめてみました。出土地は以下のとおりです。 

1 仏像誕生以前
インド、バールフット

2 釈迦の生涯
パキスタン、マルダーン
パキスタン、ユスフザイ
パキスタン、ロリアン・タンガイ
インド、ナーランダー
インド、ビハール州
インド、クルキハール
インド、サールナート

3 仏の姿
アフガニスタン、カーブル周辺
パキスタン、ロリアン・タンガイ
パキスタン、タキシラ&チルトープ
インド、アヒチャトラー
インド、サールナート
インド、ナーランダー
インド、ビラト
インド、ナーガパッティナム
バングラデシュ、ジェワーリ

4 さまざまな菩薩と神
パキスタン、ロリアン・タンガイ
パキスタン、ジャマール・ガリ
パキスタン、ユスフザイ
パキスタン、ペシャーワル周辺
インド、ボードガヤー
バングラデシュ、ラージシャーヒー&パハールプル
イン、ナーランダー
イン、マトゥラー

5 ストゥーパと仏
インド、チェンナイ
バングラデシュ、アシュラフプール
インド・ビハール州、ボードガヤー

6 密教の世界
インド、ボードガヤー
インド、ビハール州
インド、クルキハール
バングラデシュ、ラージシャーヒー&チョウラパーラ
インド、北ベンガル

7 経典の世界
東インド

附編 仏教信仰の広がり
ミャンマー、ヤンゴン
ミャンマー、プローム
ミャンマー、アラカン
ミャンマー、バガン


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図1 南アジア地域の地図(出土地に赤色下線をひいた)


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図2 図1のガンダーラ周辺地域の拡大図(出土地に赤色下線をひいた)


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図3 図1の東ガンジス地域の拡大図(出土地に赤色下線をひいた)


これらの場所とともに、仏教の四大聖地、ルンビニー(釈迦誕生の地)、ボードガヤー(成道の地)、サールナート(初転法輪の地)、クシナガラ(涅槃の地)もおさえておくとよいでしょう。

これらの地図上で出土地の分布をみると、ガンジス川流域の東ガンジス地域インダス川上流域のガンダーラ地域(図1・2で赤枠でかこまれた2ヵ所)に出土地(遺跡)が集中していることがわかります。そしてガンダーラ地域が仏像の形成に非常に大きな役割をはたしたこともわかってきます。

地図上で場所を確認することは最初は時間がかかりますが、地名と位置を一旦おぼえてしまえばあとはらくです。地図がおもしろいのは、各作品の位置をひとつひとつおさえながらも、地図全体ではすべての情報が一望できるわけで、仏教史の歴史的段階には関係なく空間的・並列的に情報がとらえられるところにあります。

こうして南アジア地域に意識をくばるようにすると、南アジアの空間が自分の意識のなかにすっぽりと入りはじめて一気に世界がひろがる感じがします。たとえばこのあたりを旅行をしようとおもったときも旅行計画がたてやすくなります(注3)。わたしはこれまでにルンビニーとサールナートに行きましたのでそのほかにも行ってみようとおもっています。


▼ 注1
東京国立博物館・特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流」

▼ 注2
東京国立博物館・日本経済新聞社・BSジャパン編集『特別展 コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流』2015年3月17日、日本経済新聞社発行

▼ 注3
上記の地域をはじめて旅行する場合はルンビニーをおすすめします。他の場所がインド領などに属しているのに対して、ルンビニーはネパール領に属し、治安も比較的よく、一大観光地になっていてよいホテルもあり滞在しやすいです。

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