本多勝一著『日本語の作文技術』第八章では、「無神経な文章」あるいは「わかりにくい文章」を書かないための注意点について解説しています。

以下に要約します。

1 紋切型
紋切型の表現を平気でつかうようになってしまうと、そのことによる事実の誤りにも気付かなくなります。紋切型の文をつかうと通念化の衝動にまけてしまうことになり、ことの本質を見のがしてしまう結果になります。

一瞬の印象、現場の事実を正確につかまえて文章化することが大切です。


2 繰り返し
繰り返しは極力さけた方がよいです。たとえば、「・・・ように思われる」「・・・のだ」「・・・のです」「・・・のである」の繰り返しはさけます。「しかし」についても同様で、「けれども」「ところが」「だが」「が」「にもかかわらず」などを混用するようにします。


3 自分が笑ってはいけない
おもしろいと読者がおもうのは、えがかれている内容自体がおもしろいときであって、書く人がおもしろがっているのを読者が見ておもしろがるのではありません。

文章というものは、このように自分の言葉をもって対象にせまり、対象をとらえるのであるが、それがで出来上がったときには、むしろ文章の方は消え、対象の方がそこにはっきりと浮かび上がってくるというようにならなければいけないのである。(野間宏『文章入門』)

読者を泣かせたいとき、感動させたいときも同様です。筆者自身の「ペン」が泣いてはならず、感動してはなりません。

たとえばうつくしい風景を描写するときにも、いくら「うつくしい」と書いても読者にはつたわりません。

美しい風景を描いて、読者もまた美しいと思うためには、筆者がいくら「美しい」と感嘆しても何もならない。(中略)その風景を筆者が美しいと感じた素材そのものを、読者もまた追体験できるように再現するのでなければならない。

素材を通して読者も追体験できるように表現します。


4 体言止めの下品さ
第一級の文章家は決して体言止めを愛用することがありません。


5 ルポルタージュの過去形
とくにルポルタージュの場合、「私は今はその現場にいないで、帰ってきて机の上で書いている」ということを文章でしめさないようにします。つまり「筆者にとっての過去」をあらわす必要はありません。

事実はちっとも過去ではなく、現在進行中である場合は現在形をもちいます。

また著者と一体になって読者も舞台を同時進行するかのように表現する場合にも現在形をもちいます。


6 サボリ敬語
何でもかんでもデスをつけるような敬語のサボリ用法はさけます。たとえば「あぶないです」「うれしいです」「悲しかったです」「よかったです」などです。「あぶないです」は「危険です」「あぶのうございます」がただしい表現です。



■ まとめ
  • 紋切型の文章は書かない。
  • おなじ言葉のくりかえしはさける。
  • 素材を通して読者が追体験できるように表現する。
  • 体言止めはつかわない。
  • 筆者にとっての過去形をしめさない。
  • 敬語のサボリ用法はつかわない。


▼ 文献
本多勝一著『日本語の作文技術』(朝日文庫)1982年1月14日
日本語の作文技術 (朝日文庫)


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