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写真1 国立民族学博物館のアメリカ展示

国立民族学博物館のアメリカ展示では、南北アメリカ大陸全体の多様性を、自然環境と民族の観点から展示していて、多様性を大観できる構成になっています。

アメリカといえばアメリカ合衆国(USA)をすぐにおもいうかべますが、ここは、USA の展示をしているのではありません。


まず、自然環境が多様です。 

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写真2 アメリカの多様な自然環境

砂漠、草原、熱帯雨林、氷雪地帯など、アメリカ大陸にはじつに多様な自然環境がみられる。その理由のひとつは、アメリカ大陸が赤道をはさんで、北は北極ちかくまで、南は南極ちかくまでひろがる広大な地域だからである。もうひとつの理由は、アメリカ大陸を南北に長大な山脈が走っているからである。その代表的な地域がアンデス山脈で、緯度の低い地域では山麓の熱帯雨林地帯から氷雪地帯まで高度によってさまざまな自然環境がみられるのである。


このような多様な環境に適応するために、各民族は、それぞれに衣服を開発しました。

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写真3 さまざまな民族の衣服

アメリカ大陸の北から南に至る広大な地域の異なる環境に適応するため、人びとはさまざまな種類の衣服を作り出してきた。環境の違いや利用できるもののちがいが衣服にも反映している。

たとえば、イヌイットは、野性トナカイの毛皮をつかって衣服をつくりました。毛皮は、防寒性と保温性にすぐれていて、零下30度以下の寒さから身をまもることができるそうです。その他、大平原地域にすむクローの革製の衣装、高地マヤの衣装、アンデス高地の衣装など、実にさまざまでした。衣装は、それぞれの自然環境を反映しています。


また、トーテムポールもありました。

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写真4 トーテムポール

これは、北アメリカの北西海岸先住民が巨木をつかってつくった木柱であり、祖先の功績をたたえる記念柱、死者を安置する墓柱、家の前に立てる入口柱、家のなかの家柱などです。

その他、「出会う」「食べる」「祈る」「創る」などの展示でも多様性を見ることができました。 


このように、アメリカ展示は、アメリカの多様性を大観できる仕組みになっています。大観という方法は、全体(大局)を一気に見る方法であり、対象のすべてを大きくとらえる方法です。要点だけを見る「飛ばし見」や「拾い見」ではありません。要約あるいは分析ともちがう方法です。

多様性とは、大観することによってこそわかることです。国立民族学博物館のアメリカ展示は、大観し、多様性を知るために適した展示だとおもいました。


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