国立民族学博物館の展示は、日本展示も非常に充実しています。
 
世界各地の展示室を一通りみおわってから日本の展示室に到達すると、日本を、世界のなかに位置づけて相対化してとらえなおすことができます。

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稲作の道具展示(日本展示)

日本展示では、日本の農業は稲作農業が中心であり、これが、日本文化の形成に非常に大きな役割をはたしてきたことがよく表現されています。

しかし、稲作および稲作文化に関する展示とともに、一方で、漁業(漁撈)に関する展示にもかなりのスペースをとっています。

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漁業(漁撈)に関する展示(日本展示)

これらの展示を見ていると、日本は、〔稲作+漁撈〕の半農半漁の地域だということがうかびあがってきます。これが、炊いた飯の上に魚をのせてたべる、寿司の食文化をつくりあげたことがわかります。日本食の代表が寿司であることは言うまでもありません。

このことは、ヨーロッパ展示と対比させると一層鮮明に想像できます。ヨーロッパは〔麦作+酪農〕の半農半牧であり、ヨーロッパ人はパンにバターをぬって食べます。それに対し、日本は〔稲作+漁撈〕の半農半漁であり、日本人は、米の上に魚をのせて食べるのです。

このように、博物館の各展示を空間的に対比させて見ると、おもしろいことがわかってきます。そのことは、直接みえる形で展示されているとはかぎりません。展示を見ているうちに想像できたということでよいのです。

建物のなかで、各展示物を空間的にとらえて想像をふくらませることは、博物館のなかをあるくたのしみのひとつです。


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