立花隆著『自分史の書き方』は、自分史を書くためのガイドブックです。たくさんの実例が解説つきで掲載されていて、自分史を書くためにとても参考になります。

立花さんは、シニア世代になったら自分史を書くことをすすめていますが、わかい人でも中年の人でも、自分史を書いて、これまでに自分があゆんできた道のりをふりかえり、とらえなおしてみる意義は非常に大きいとおもいます。

わたしは、人間誰でもシニア世代になったら、一度は自分史を書くことに挑戦すべきだと思っている。自分史を書かないと、自分という人間がよくわからないはずだからである。

「自分史」を書く上で、最重要なステップが「自分史年表」を作ることである。

自分という人間がどのようにできあがってきたのかを語るのだから、一種の物語を語っていくという気持ちで書いていくのがいいと思う。

いろんなエピソードの連鎖として、自分の人生を語っていく。

自分史の主たる材料は、誰でも自分の中にあるのだから、それをどのように掘り起こしていくかが大切なのである。

そして、第2章では、記憶の掘り起こしにもっとも役にたつ「自分史年表」の作り方について説明しています。

通常、長い文章を書くときには、その大ざっぱな内容の流れをメモ風に記した「コンテ」を作るのが普通だ。自分史の場合、この自分史年表がコンテになる。いい自分史年表ができたら、自分史はもう半分できたといってもいい。

はじめからあまり詳細な年表を作ることに熱中するのはよくない。

自分史年表の骨格は、いわば、「履歴書(学歴・職歴)プラス個人生活史プラス家族史」みたいなものであるから、まずは、そのアウトラインを自分の思い出すままにメモ的に書いてみるところからはじめるのがよい。

大きな区分けが見えてくるような自分史年表を作ることが重要だ。区分したら、一つ一つの区分に適当なラベリングをしておくとよい。

人間の記憶は、具体的にモノに結びついて記憶システムの中にしまいこまれているものが多い。だから、なにか具体的な手がかりを目にしたり、手にしたとたん、ひとかたまりの記憶がドッとよみがえってくるということがよくある。

そういう意味で、なんといっても重要なのはアルバムである。

本書に掲載されている自分史年表の実例はとても参考になります。これらを参考にして、自分独自の自分史年表をまずはつくってみるよいとおもいます。そのときには表計算ソフト(スプレッドシート)をつかうとよいでしょう。

自分史を書くという行為は、人を、情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)をする存在ととらえた場合、アウトプットをするということです。それは、アウトプットのなかでもかなり重要なアウトプットになるにちがいありません。

また、本書で提案された方法は、記憶の想起から、アウトプットへつなげていくための一般的な方法としてもつかうことができます。つね日頃のアウトプットの効果をあげるためにも参考になるとおもいます。

最後に、人生に関する、立花さんのご意見を引用しておきます。

わたしは社会的にはいわゆる勝ち組に属する人々をたくさん知っている。しかし、そういう人々が幸せそうかといえば、必ずしもそうとはいえない。仕事に追われ、時間に追われ、心理的に休む間もなく働いている。

わたしは基本的に、人間なにが幸せかといえば、「やりたいことを、やりたいように、やる」という一点に尽きると思っているが、勝ち組上位者になればなるほど、そういう生活とは遠いところにいるようだ。勝ち組であり続けたいと思えば、いつでもトップ集団から置いてきぼりにならないように努めなければならない。

しかし、無限のエネルギーがあれば別だが、(中略)常にトップ集団の中にい続けるなんてことはできない相談である。(中略) 

勝ち負けでことが決まると思う人たちの人生ゲームからいち早く脱して、勝ち負けにわれ関せず、と思う人たちの側に身を移してしまう。


▼ 文献
立花隆著『自分史の書き方』講談社、2013年12月5日
自分史の書き方

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