人がおこなう情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)の観点から、梅棹忠夫さんの「知的生産の技術」(注)を整理するとつぎのようになります。

 インプット: 観察する、本や資料を読む、発見する
 プロセシング:かんがえる、ひらめく
 アウトプット:メモをとる、文章を書く

インプットとは、目や耳などの感覚器を通して、自分の意識のなかに情報をとりいれる場面です。具体的には、見たり、読んだり、聞いたりすることです。

プロセシングとは、入ってきた情報を選択したり、記憶したり、整理したり、組みかえたり、編集したりすることです。

アウトプットは、言葉や絵などを書きだす場面であり、具体的には、メモをとったり、日記や手紙、記録などの文章を書くことです。単語一語を書きだすような簡単なメモであっても、アウトプットになっていることに注意してください。


たとえば、「観察した →『これだ!』とおもった → 単語一語のメモをとった」という過程があったとします。これも情報処理の3場面(インプット→プロセシング→アウトプット)になっています。

 インプット:観察した
 プロセシング:「これだ!」とおもった
 アウトプット:単語一語のメモをとった

「これだ!」とおもったいうことは、自分の意識に変化がおこって、自分独自の情報選択をしたのであり、プロセシングがおこったことになります。

梅棹さんは「発見をとらえる」ということを重視しています。発見をとらえて記録するということは、初歩的ですが重要な情報処理(インプット→プロセシング→アウトプット)になっています。


このような情報処理のために必要な道具は、現代では、スマートフォン、パソコン、ドキュメントスキャナーです。わたしの場合は、iPhone、MacBook Pro、ScanSnap をつかっています。そして、スマートフォンとパソコンはクラウド(インターネット)でつながっていることが必要です。

スマートフォンは、旅行やフィールドワークなどの現場でおもに役にたち、パソコンはオフィスで役にたちますが、クラウドが普及した現在では、それらの区分を明確にする必要はありません。その場に応じて、つかいやすい方をつかえばよいでしょう。


このような道具をつかって情報処理をおこなっていれば、情報処理をするたびに(アウトプットをおこなうたびに)ファイルが形成されます。

「知的生産の技術」で「京大型カード」や「こざね法」の紙きれをつくるということは、現代的にとらえなおせばファイルをつくるということでり、カードや紙きれを操作し組みかえるということは、ファイルを操作し組みかえるということです。そしてその結果を、文章としてアウトプットしていくわけです。

たとえば iPhone のボイスメモ機能をつかってメモをとった場合(口述筆記をした場合)、1個のファイルが形成されます。あるいは Mac のワープロで文章を書きだした場合も1個のファイルが形成されます。

それぞれのファイルにはファイル名(見だし)をつけます。各ファイルは、ファイル名(上部構造)と情報の本体(下部構造)とからなります。コンピューター・ファイルはファイルそのものです。ファイルでは、1ファイルにつき1メッセージの原則をまもります。

このようにして、情報処理を1回おこなうごとに1個のファイルが形成され、情報処理をおこなえばおこなうほど(アウトプットをだせばだすほど)ファイルが蓄積していきます。パソコンには検索機能がありますので情報の検索も簡単にできます。

有用なファイルについては、ブログやフェイスブック・ウェブサイトなどにアウトプットをしていくとよいです。ファイルはどんどん蓄積され、検索もできます。ブログの場合は1記事が1ファイルになるようにし、1記事1メッセージの原則をまもるようにします。


▼ ドキュメントスキャナー:ScanSnap 





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▼ 注:文献
梅棹忠夫著『知的生産の技術』(岩波新書)