梅棹忠夫著『知的生産の技術』から、知的生産の技術は、基本的にはつぎの3段階からなることがわかりました。

 1.「京大型カード」に記入する
 2.「こざね法」でまとめる
 3.文章を書く

これらを、現代の情報処理の観点からとらえなおすとつぎのようになります。

 1.ファイルをつくる
 2.ファイルを連携・結合する
 3.文章化

ファイルとは情報(データ)のひとまとまりのことです。

道具については、紙のカードやタイプライターは現代ではつかわず、スマートフォンとパソコン、付箋(ポストイット)をつかいます。


この3段階をくわしくみていくとつぎのようになります。

1.ファイルをつくる
これは、パソコンでファイルをつくることです。

ファイルにはかならずファイル名(見だし)をつけます。また、「京大型カード」の原則にしたがって、1ファイル1項目の原則をまもります。ブログを利用する場合は、1記事1項目の原則をまもります。

パソコンが便利なのは、テキストだけでなく、画像・音声・その他の資料も、型式にとらわれずにファイルにすることができることです。

パソコンやブログをつかっていれば、ファイルは時系列で集積されていき、個人文書館がおのずと形成されます。


2.ファイルを連携・結合する
課題を決め、関係のありそうなファイルをピックアップして、フォルダーにまとめます。エイリアスやショートカットを利用してもよいです。

フォルダーには適切な名称(見だし)をつけます。

フォルダーのなかに、さらにフォルダーをつくって階層構造にしてもよいです。一般的には階層構造になります。これが現代のファイリング・システムです。

このような階層構造をつくるときに、元のファイルのファイル名あるいはキーワードを、付箋(ポストイット)に書きだして「こざね法」をやってみるとよいです。

あるいはもっと簡略には、デスクトップで、フォルダーをつくり、アイコンをうごかしながら階層構造をつくってもよいです。

既存の順序にはとらわれずに、さまざまにファイルをならべかえ、あたらしいファイルのグループを編成します。

なお、あらたにつくったフォルダーは、より高次元の情報(データ)のひとまとまりととらえることもできます。つまり、フォルダーはより高次元の「ファイル」なのです。フォルダーをつかって整理するということは、元のファイルを、より高次元のファイルのもとで``統合している作業にあたります。


3.文章化
一般的には、第2段階までおこなえばよいという面もありますが、できれば文章化に積極的にとりくんだ方がよいでしょう。

ファイルによってあらたにつくった構造にもとづいて、文章化をすすめます。今度は、前からうしろへとテキストをつらねていきます。

元のファイルの情報(データ)を文章のなかにおりこんで書いていきます。元のファイルは、パソコン上でしたらアイコンをダブルクリックすればでてきますし、ブログでしたら検索機能をつかえばよびだせます。


■ ファイルは成長する
第1段階は、最初の小さなファイルとそれらの集積でした。

第2段階は、階層構造をつくる段階でした。ここで、フォルダーは、より高次元の「ファイル」ととらえることができます。フォルダーはやや大きな(中規模な)ファイル(中規模な情報のひとまとまり)とみなすことができます。ファイルのなかに小さなファイルがあるといった、入れ子構造をイメージできます。

第3段階は、文章を書く段階であり、ワープロをつかって書けば、結果的に、1つのあたらしいファイルができあがります。これも、文章としての情報のひとまとまりにはちがいないので、やはりファイルでです。第1段階、第2段階からみると、もっと大きなファイルです。第1段階の元のファイルは、第2段階の構造にしたがって、第3段階で1本の大きなファイルに統合されたわけです。

ファイルは、それが情報のひとまとまりになっているかぎり、小さくてもファイルであり、中規模でもファイルであり、大きくてもファイルでです。

つまり、情報のひとまとまりとは、どのようにでも柔軟に設定できるのです。電子書籍1冊も1つのファイルです。柔軟にかんがえることが大切です。

このような観点にたつと、ファイルでいう情報のひとまとまりとは、ひとつのメッセージのかたまりととらえた方がよいかもしれません。すなわち、1ファイル、1メッセージとするわけです。たとえば第3段階の文章化では、主題あるいは結論を1点にしぼりこめばファイルになるということです。

こうして、段階がすすむにつれて、ファイルは大きくなり成長していきます。結局、3段階の本質は、ファイルが成長していく過程でした。自分のファイル(メッセージ)を成長させるという精神でとりくむことが大事でしょう。


なお、旅行やフィールドワークに行って、現場で簡単なメモをとる、あるいは iPhone のボイスメモに簡単に記録をするとします。実はこれも、小さいですがファイルです。やはりファイルができます。最初の豆ファイルです。これは、いわば第0段階のファイルといってもよいでしょう。


▼ 参考文献
梅棹忠夫著『知的生産の技術』(岩波新書)岩波書店、1969年7月21日