METライブビューイング(新宿ピカデリー)でヴェルディ作曲『オテロ』を視聴しました。

指揮:セミヨン=ビシュコフ 
演出:エライジャ=モシンスキー
出演:ヨハン=ボータ(オテロ)、ルネ=フレミング(デズデーモナ)、ファルク=シュトルックマン(イアーゴ)、マイケル=ファビアーノ(カッシオ)

『オテロ』は、ウィリアム=シェイクスピアの悲劇『オセロ』(Othello)を原作とする、全4幕からなるオペラです。ヴェルディが74歳のときに作曲、彼の26のオペラのうち25番目の作品です。1887年にミラノ・スカラ座で初演されました。

15世紀末、ヴェネツィア共和国領のキプロス島。ムーア人の将軍オテロは、剛毅な英雄として名声を得ていました。オテロに出世をこばまれたことをうらむ旗手イアーゴは、新婚の妻デズデーモナに夢中になっているオテロをおとしいれようと計画、デズデーモナと副官のカッシオの不倫をでっちあげ、オテロにそれをふきこみます。イアーゴの言葉を信じ、嫉妬にかられたオテロは、彼にあやつられるままに・・・

『オテロ』の真の主人公は、イアーゴ(ファルク=シュトルックマン)です。イアーゴは、さまざまな謀略をくわだて、オテロをひきずりまわし、デズデーモナを悲しみのどん底につきおとします。イアーゴは、周囲の人々を破滅へとおいこんでいく悪党のなかの悪党です。

イアーゴにとっては、悪意は、深層意識からわきでてくる、生きるためのエネルギーになっているのです。イアーゴにとっては悪意はすべての原動力であり、悪意に根拠など必要ありません。悪意をみがいて、ますます力づよく行動していきます。

そして、イアーゴの心の底からひびいていくる悪魔の歌声は、大きな波動となって周囲をつつみこみ、オテロとデズデーモナを翻弄していきます。二人は、それとは気がつかずに、ただその波動にのみこまれ転落していきます。これを運命とよぶのでしょうか。

それにしても、ファルク=シュトルックマンのイアーゴ、見事でした。


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