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国立科学博物館 


東京・上野、国立科学博物館で開催中の企画展「ヨシモトコレクションの世界」を先日みました(会期:2015年 1月18日まで)。多数の剥製標本を通して生物の多様性を実感することができました。


国立科学博物館ヨシモトコレクションとは、日系二世の実業家ヨシモトさんが、1957年から1995年にかけて世界中から狩猟によって得た標本群のことです。1997年から1998年にかけて、ハワイ・オアフ島のW.T.ヨシモト財団より国立科学博物館へ寄贈されました。

哺乳類・鳥類・爬虫類の標本約400点からなり、種数は全173種(鳥類13種、爬虫類2種)をふくみます。その多くは全身が剥製としてのこされており、内訳は全身剥製267点、頭部剥製98点、半身剥製7点、なめし皮7点、頭骨1点、角8点、牙10点です。

剥製の製作を手がけたのは、アメリカ合衆国ワシントン州シアトル市のクラインバーガー社で、その優秀な技術は、動物の細部を見事に再生しているといえます。特に頭部に浮き出した血管の様子や、肛門周辺の造形は見事で、またいくつかの標本では生きていたときの行動を再現して作製されています。すべての個体について捕獲した時期と場所が記録されており、また各ハンティングの記録は付帯資料としてキャビネットにおさめられています。

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ヨシモトコレクションは今回の企画展示のほか、国立科学博物館・地球館3階や1階に常設展示されていて見る者を圧倒しています。もしこのコレクションがなかったなら、国立科学博物館の動物展示はかなり貧弱なものになったでしょう。

このコレクションをきずいたヨシモトさんとは、日系二世の実業家としてハワイで大成功をおさめたのち、世界各地で狩猟をおこない、動物の剥製の製作をすすめました。そして晩年には自然保護を推進するようになりました。

剥製標本は立体でリアリティがあったため体験的に動物について理解をふかめることができました。動物写真を図鑑で見ているのとちがい迫力がありました。また、せまいスペースのなかで多数の標本をみることができたので、動物の多様性を短時間・高密度で実感することができました。

動物の多様性をとらえる場合、つぎのような段階を踏むとよいでしょう。

 (1)図鑑で見る
 (2)博物館で見る
 (3)動物園で見る
 (4)フィールドワークをおこなう

(1)図鑑で見れば、地球上で知られているほとんどの動物を写真や絵で体系的に見ることができます。
(2)写真や絵は平面的(2次元)ですが、展示標本は3次元であり、いろいろな角度から動物を立体的にとらえることができます。
(3)博物館の標本は死んだ動物ですが、動物園では実際に生きている動物を見ることができます。より現実にちかづきます。
(4)フィールドワークをおこなえば、野性の動物を生態系のなかに位置づけて見ることができます。しかし、フィールドワークでは動物に出会える機会は少なくなり、ガイドや専門的なやり方が必要になります。

(1)から(4)にいくにしたがって動物に出会える頻度は低くなりますが、より現実の状態を知ることができます。

このような認識の段階の全体像を踏まえて博物館の動物展示を利用すれば、動物に関する理解がすすむとともに、ヨシモトさんの功績が後世まで生かされるとおもいます。

つぎのデータベースも有用です。


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