特別展「ガウディ X 井上雄彦 - シンクロする創造の源泉 -」(東京・六本木、森アーツセンターギャラリー)を見ました(会期:東京会場は2014年9月7日まで、その後、金沢、長崎、神戸、仙台を巡回)。

アントニ=ガウディ(1852-1926)は、スペイン、カタルーニャ出身の、バルセロナを中心にして活動した建築家の巨匠です。

今回の特別展は、ガウディ自筆のスケッチや図面、大型の建築模型やガウディがデザインした家具などの貴重な資料約100点を通して、ガウディの偉業を紹介するとともに、漫画家・井上雄彦がガウディの人間像とその物語をえがきだすという企画です。

140905 音声ガイド
 


■ 展示構成

展示構成はつぎのようになっています。

第1室 トネット少年、バルセロナのガウディへ
1852年6月25日、ガウディはバルセロナの南に位置する田舎町で生まれました。子供の頃の愛称はトネットでした。自然の動植物をじっと観察する時間が長かったそうです。

第2室 建築家ガウディ、誕生
自由な発想とデザインがみがかれ、画期的かつ合理的な建築構造を形にしていきます。グエイの邸館やグエル公園、コロニア・グエル教会など、建築家ガウディの名を世にひろめた作品が次々とつくられました。図面やスケッチ・写真・模型、そして家具やデザイン・パーツなどが展示されています。

第3室 ガウディの魂 - サグダラ・ファミリア -
ガウディのキャリアと人生の結晶ともいえるサグラダ・ファミリア聖堂の建築の歴史と発展を関連資料でたどります。ガウディは、1831年、31歳のときにサグラダ・ファミリア聖堂に主任建築家としてたずさわりはじめ、1914年には、ほかのすべての仕事をことわって聖堂建築のみに身をささげるようになります。

サグダラ・ファミリア聖堂は未完の聖堂であり、なんと、着工から約130年もたった いま現在でも建設途中なのです。

現在でも建設がつづけられていますが、一方で、すでにできあがった部分の修復もおこなわれています。つくりながら一方で修復するという前代未聞のこの建築物は創造の本質をしめしており、創造とは過程であり、完成したら創造はおわることをおしえています。


■ 自然の造形を建築にとりいれる

ガウディは、自然界の幾何学的な形をはじめて建築にとりいれました。自然界がもつ完璧な機能に注目し、らせんや局面など生物の基本的な構造を多用しました。自然の機能にうつくしさを見いだし、うつくしい形は構造的にも安定していることをあきらかにしました。また、自然界に完全な実用性が存在するなら、それは崇高な装飾になるとかんがえました。

たとえば、理想の柱をもとめて、植物がらせん状に葉をのばして生長する様子を研究しました。

また、懸垂曲線をつかった建築物をつくりました。これは重力によって自然にできる形であり、ロープの両端をもってたらしたときに見られる構造を上下さかさまにして構造物にしました。鉛をいれた袋を均等につるしてアーチの耐荷重性をもとめました。

カタツムリの殻や落下するカエデの種から らんせんの形や運動を見て、らせん階段をつくりました。

双曲面の筒状になった採光口をつくり、屋根から入った自然光を、反射させて やわらげてつかいました。

葉の形状をとりいれて屋根をデザインしました。錐状面というこの曲面はおもさにもたえ、水はけもよいです。

このようにガウディは自然の造形から着想をえて、自然を教科書として仕事をすすめました。「創造性(オリジナリティー)とは起源(オリジン)に戻ることである」という言葉がとても印象的です。

ガウディの作品を見てているとあらためて自然を見なおすことになり、着想のためには自然観察が重要であることがよくわかります。 


■ 世界遺産「アントニ・ガウディの作品群」

なお、ガウディの作品の一部は、「アントニ・ガウディの作品群」(1984年登録、2005年拡張)として、バルセロナの以下の物件が世界遺産に登録されています。
 
カサ・ミラ、グエル邸、グエル公園、サグラダ・ファミリア聖堂の一部、カサ・ヴィンセス、カサ・バトリョ、コロニア・グエル聖堂の地下聖堂。



▼ 参考書